11 (後篇)
JRの駅近くという、至便な場所にある某女学園。
とはいうものの、だからとそこへ誘致された最近のそれではなくて
むしろ結構 歴史もある、由緒正しいミッションスクールであり。
躾も行き届いた品行方正、お行儀のいいお嬢さんたちが、
天真爛漫なまま、十代半ばの楽しい3年間を過ごしておいでの高校だとか。
そんな花園を前にして、
その禁苑の奥深く
善意のままに持ち去られたイエスの忘れ物を
さあ どうやって取り戻したものか
困ったように考えあぐねていた最聖二人へと、
「…あの、もしかして。」
おずおずと声をかけて来た人があり。
うあ とうとう怪しい存在と訝しがられてのことかと、
どひゃあと身をすくめたブッダ様の傍らから。
そちらは 身に覚えがないからこそだろ何の思惑も予断も抱かぬまま、
何ぁに?とばかり
それは造作なく振り返ってしまわれたイエス様だったが。
「…っ。」
そこに立っていたのは、濃色基調のセーラー服姿というお嬢さん。
先程から彼らが見やっている方にも幾たりか見受けられるのと同じ、
そちらの女学園の制服をまとっておいでであり。
あああ やはりやはり
学校を覗き見している不審な者として見とがめられたかと。
ともすれば観念しかかったか、それとも諦念からなのか、
ブッダが がぁっくりと肩を落としたその同んなじ間合い、
「…え?」
そんな彼より先んじて、
相手のお顔を真っ向から見やったイエスが、
こちらは おやまあと…何にか感嘆したよな声になる。
それから、
「ブッダ。ほら彼女だよ、覚えてない?」
「………はい?」
ちょいちょいと肩に手を置かれ、
顔を上げたが、視野の中のイエスは向こうを向いたまま。
もしかしてイエスの知り合いの人でしょか、
だったならまだ何とかなるかもと、やや安堵しつつ
ブッダもようやっと、気を静めつつ見やったそちらに
一人、立っていた少女はといえば。
「……………あ。」
「お久し振りです。///////」
どこか面映ゆそうな、
それでいて含羞み交じりという微妙な笑みに、可憐な口許をほころばせ。
軽く小首を傾げた所作に揺れ、
肩に触れるかどうかという長さで揃えられたつややかな黒髪が
さらさらと夕映え間近い風に遊ばれておいでの。
華奢な印象が強い、何とも小柄なお嬢さんだったが、
「あ、えと、確か…。」
そうそう忘れはしないという、独特な出会い方をした人でもあるがため。
ブッダの側も せっかくややホッとしたのが吹っ飛ぶほど、
今度は意外な出会いへと驚いたし、
「覚えてるよぉ。
宇都木さんチの、確か 一子ちゃんでしょ?」
こちらは相変わらず屈託のない顔で、
イエスがさらりとフルネームを口にする。
「…あ、えと、名前まで?////////」
あれれ? あのとき名乗りましたっけ私と、
そこは彼女の側へと意外だったか、
黒目がちで愛らしく、だがだが意志が強そな双眸を見張り、
愛らしい手を口許へ寄せるお嬢さんだったのへ、
「うん。
お爺様が玄関までお送りをって言って、
その折に“いちこ”って呼ばれたでしょう?」
私、お友達は名前呼びするもんだから、
ついついそっちも覚えてたの、と。
そりゃあ朗らかな笑顔で言ってから、
「あ、でも、
それほど親しくはないお兄さんから
名前の方で呼ばれるのは おイヤかな?」
「いえそんな…。////////」
押しつける気はないよ?と、
ちゃんと了解を取ろうとするだけ、進歩といや進歩かも。
そうと思って、こそりと胸を撫で下ろしたブッダも
ちゃんと覚えていた こちらのお嬢さん。
先の夏に ちょっとした騒動つきで知り合ったお人で、
(参照『天の神様にも内緒の 笹の葉陰で』終盤)
「その制服ってことは…。」
あの女学園の生徒さんだってことになるよねと、
イエスが何げなく問うたのへ。
何故だか急に
“あわわ//////”と 含羞みの度合いを深め、
顔がますますと赤くなり、口許も軽く歪ませてしまわれる。
「え? 違うの?」
「…いえ、違いません。////////」
二人の認識、何だか咬み合ってないようだと見定めて、
そこへはブッダが しょうがないなぁと割って入り、
「イエスは裏のあるような意地悪な言い方はしないから、
どうか気にしないでネ。」
まずは一子さんに安心してと諭してから、
そのままイエスへも通じるように続けたのが、
「あの女学園に通っていながら
イエスのことを 全く知らない身だったなんて、
実は平仄が合わないことだったっていうの
今更ながらに何かの機会があって気がついたんだよね?」
「………はい。///////」
そう。このお嬢さんは
名前も知らない、でも特長は凄んごく有る(笑)異邦人二人として、
イエスとブッダを“訊き込み”という地道な方法で探していたのだが、
「私、あのその、完全な“帰宅部”なんですよね。」
学内に友達がいないワケではないのだが、
幼いころから続けておいでの習いごとの関係で、
授業が済むと真っ直ぐ帰宅という毎日を過ごしていたものだから。
まだ一年生だということもあり、学内の雰囲気に馴染みが薄く、
部活をしていなければ、放課後情報まで掘り下げて知るなんて、
そうそう出来ることではなくて。
「学園祭を前にして、
執行部の皆さんがケーキがどうこうと
随分と盛り上がってらっしゃるのを聞く機会があって。」
ブッダさんが焼いてくださった絶品ケーキを
執行部で復刻するんだっていう話の詳細を聞いてみて。
そこから芋づる式に、
「此処では、ううん、此処のご近所界隈では、
お二人が 知らない人はないほど有名人なんだって判って。////////」
クラスメートと買い食いでもしておれば
あっと言う間に、その存在は既知のものとなってたはずであり、
地道に訊き込みなんてする必要もなかった…とあって。
あの騒動は、あの苦労は何だったのと、
目が点になったのだろう、若しくは愕然としたのだろうことが
先程のやり取りから既に伺えていたブッダと違い、
「…ありゃ。」
今やっと事情が通じたらしいメシア様。
本人を前にして一層恥ずかしいと思うのか、
肩を小さくすぼめている一子さんを見やると。
しばし キョトキョトと視線を泳がせてから、
あらためて 尊いお手々を彼女の肩へ置き、
「…一子ちゃん、どんまいだよ?」
「ははは、はい。////////」
それは清々しく微笑ってのお言葉には、
似たような天然さんである ブッダでさえ(こらこら)
そんな言いようって…と ついつい思った慰めようだったが。
こういうところも彼の良いところであるのだし、と
胸の内にて、苦笑とともに ほのぼの思い直してから。
「一子さんが此処の人だっていうのは、
もしかして助かることかもだよ、イエス。」
如来の自分が言うのもなんだけど、
地獄で仏、一条の光明のような存在が現れたと。
先程までの諦念一転、
希望に照らされたように表情が上向いたブッダなのへ、
「え? そうなの?」
それより私、良いこと思いついたのにと、
さっき何やら思いついてたらしいのの続きを、
ねえ聞いて聞いてと、
こちらもこちらで ずんと表情を輝かせるイエスであり。
「???」
何でまたこんなところに居合わせた彼らなのかも知らぬ一子さん、
何のお話でしょうかと、素直に目元を瞬かせておいでだが、
ブッダの側はといや、何とはなくいやな予感が沸いており。
そこへとあっさり披露されたのが、
「私が“キリスト”コスプレしてる人だって格好で
おごそかに紛れ込むってどう?」
今宵はハロウィンなんだから…と思いついたらしいのは明白で、
ミッション系の学校だという事情をも加味してのことなんだろうけれど。
ブッダとしては
“あああ、やっぱり…。”
いつぞやに、教会は私の父の家なのだから、
いつ訪れても泊まり放題だと言い出したよりは
ややマシかも知れないが。(原作ネタですいません)
「ハロウィンで無礼講が許されるのは
小学生の低学年までだと思うよ、イエス。」
ましてや、此処は日本だし、目的地は男子禁制の女学園だから、
「いくらミッション系の学校であれ、
そんな乱入、ジョークにさえしてもらえないってば。」
「そうですね。
たとえイエス様の仮装をなさっても、
それだけでは男性が入り込む理由になりません。」
「ほ、ほら。」
こちらの現役生徒である一子さんからも重ねて言われ、
味方を得たぞとの支えとしたそのまま、
《 それより、いっそ私が女体化してとか。》
ブッダもブッダで思いつきがあったらしいこと、
二人にだけ聞こえるよう、伝心でもって言い足したものの。
それへは、
《 それこそダメだよ。あれって覇気を結構使うんでしょう?》
天界から何事だろかと注目されかねないのだろうし、
それをおいても、
《 開祖たるキミが、
尊い力をこんなことへ濫用しちゃいけないでしょー?》
《 ……はい。////////》
あああ、こんな事態の渦中だってのに、
しかも先に迷走した意見を出した側なのに。
打って変わって真摯な眼差しとなり、
こんな方向音痴なこと言うキミなのが、
この胸がホントにじわんと熱くなるほど
どうしようもなく好きだなってなる私ってどうだろか。
……知るもんか。(あ、すいません、つい。)笑
微妙な窘めに しおしおを肩をすぼめてしまったブッダなのへ。
そちらの会話は当然聞こえてはなかったせいもあり、
やっぱりキョトンとしていた一子さん、
「あの、もしかして学校に何か御用なんでしょうか。」
そういえば、さっき 自分がいれば助かると
螺髪のお兄さんのほうが言ってはなかったか。
しかもどうやって潜り込もうかなんて、
果敢で不穏な発言も交えている彼らでもあり。
何にか窮しているのなら、
自分も手伝いましょうかと思ってだろう、
「罰ゲームとかで、
校内の写真を撮って来いと言われてらっしゃるとか。」
それはそれは深刻そうなお顔になって、
こそりと零してくれた“例えば”だったが、
「肝試しみたいだねvv」
あははと笑ったのがイエスなら、
「他所の学校を撮って来て誤魔化されませんかね、それだと。」
どんな校内かはそれこそ此処へ通うお人でもないと判らないのだしと、
随分と堅実なお答えをしてくれたのがブッダであり。
それでも“渡りに船”には違いないからか、
「顔見知りくらいの知り合いなのに、
しかも こちらへ通ってらっしゃるお人だってことを見込んで
頼みごとをしてしまうなんて
怪しいこと極まりないかもしれないけれど。」
こんな若年でありながら、
世の中の“筋”というもの、よくよく判っておいでのお嬢さんが相手。
なので、尚のこと 知り合った経緯を笠に着るような運びにならぬよう、
彼なりに気遣ってのことだろう、
言葉を尽くしての前置きをしてから、
「実はあのね? 私たち執行委員の人に会いたいんだ。」
切なげに眉を下げ、
手を合わせかねないほどにお願いという想いを込めて、
本旨本題を告げたものの、
「はい?」
確かその執行委員会の人たちと、
噂の復刻ケーキを協力してお焼きになったのでは?と。
そこは部外者ゆえのこと、詳細までは事情を知らないし、
ましてや 彼らの窮地の根幹なぞ判らぬままの一子さん。
キョトンとしてしまわれるのも無理はないと、
そこはそれこそ納得の上で、
自分たちの知る執行部の関係各位が、
ご自身の携帯、スマホの電源を落としてらっしゃるらしいこと。
よって連絡が取れないのだが、
こちらは忘れ物を探したいだけなので、
乗り込むなんて本当は本意じゃあないことを
一から説明せねばと口を開きかかったそのときだ。
「……あ、ブッダ。
これ、アイコンが光り始めてるよ?」
「え?」
スマホのGPS探査画面をあらためて見直したらしいイエスが、
それへと気づいて、やや狼狽え気味な声を出す。
「これって あの子たちにも何か知らせてないのかなぁ。」
「う…っ。」
イエス本人は仕組みも何も知らないこととて、
スマホの持ち主であるブッダへそうと問いかけるのは無理ないとして、
「どどど、どうだろうか。」
実をいや、ブッダも
どういう事態にはどんな反応が出るとかいう詳細までは知らないらしく、
それは大変と小さな画面をのぞき込む。
そも、こういったIT機器にはあんまり関心もない性分、
イエスの行方が知れなくなった場合に、
どこにいるかが速攻で探せれば助かると、
はっきり言って そこだけしか把握してはなかったようで。
そして問題なのは、
ここでイエスが口にした“あの子たち”というのが
大天使を指していて
いくらオフ会なんていうお楽しみの場へ身を置いて居ようとも、
仕えるお人で しかも神の子イエス様のピンチと察すれば、
何をおいても、途中にどんな障害物があっても
全て突破し、疾風のように飛んでくだろう、
凄まじい破壊力を持つ子が少なくとも約一名はおいでとあって。
「イ、イエスっ。
ミカエルさん、いや ウリエルさんを直接此処へ呼んでっ。」
当の本人が間違いなく此処に居ると知らせれば、
せめてその加速に ブレーキを掛けられまいかと。
何事もないままでは応答もなく、
恐らくは見向きされずだったのだろうスマホへも、
今のこの状況下なら話は別。
本人は此処だよという発信へ
何とか注意を向ける彼らではなかろうか…という、
咄嗟のことながらも素晴らしい反射で
最善の策を捻り出した知慧の宝珠様だったれど。
「それでは間に合わない。」
それこそ彼なりに何か感じ取ったものでもあるものか。
すうと背条を真っ直ぐ延ばし、
学園側へとその身を向けてしまわれたヨシュア様。
辻のこちらという物陰に隠れる格好でいたものが、
そちらの通りへ踏み出してもいて。
見つかってはいけないのではと
制止の声を掛けんとしかかった一子さんともども、
突然の豹変に意表を衝かれ、
一体どうしたのだろうかとブッダも唖然と見守る前で、
そこに何が見えるというのだろうか
真摯な表情のまま、
女学園の建物を
ただただ真っ直ぐ見つめていたイエスだったが
「………叱らないから、此処へおいで。」
掛けたお声はそれは優しく。
右手のみながらも延べられたその手は、
嫋やかながら頼もしく。
見守る二人も思わず息を飲み、
その荘厳さにあてられて、そこから動けずになったほどであり。
そして……。
他人様の私物を勝手に弄るなんていけないことだと、
そこはさすがに 分別もありはしたらしく。
なので、誰もいない執行部の部室にて
誰も来ぬうちにこっそりと。
ご近所レベルだとはいえ 学内では知らぬ人が…ほぼ居ないほど(笑)
それは有名な人気者でもあるイエスさんの髪飾り、
レプリカじゃあない本物を、
かぶってみましょう、何なら写メも撮りましょかと。
日頃なら戒めのほうが働くだろう 清かな御心の乙女たちだが、
学園祭前という気分の高揚もあってだろ、
柄にもないこと、
ちょっとした悪ふざけを仕掛かっておいでだったのだが。
「…あら?」
今しもそのつややかな髪へ載せんとしかかったお嬢さんが、
だが、手元を掠めた何かに気づいた。
ささやかながら、チクリという感触があったらしく、
「ヤダ、蜂かしら?」
頭の辺りへ手を挙げて振って見せる。
だが、ああ追い払おうとしてはいけませんわと、
居合わせたお友達の一人が助言して。
「先日テレビの特集で観たのですが、
蜂は攻撃されると、
此処に敵だぞっていうホルモンを撒き散らして、
仲間を集めてしまうとか。」
「え〜〜〜。」
私たちで見て差し上げましょう、
羽根の音なんてしなかったけれどと、
茨の輪を自分の頭上へ掲げて見せたお嬢さんの周囲を
ぐるぐる見回すあとの二人であり。
冠自体は 蔓も葉や棘の部分も素材としては柔らかかったので、
まさかにこれが そんな仕様になっているかもとは思えなんだのだろうけれど。
柔らかそうな乙女の指先、手のひらへ、
実は鋭いその棘が、本来の主人以外の頭には載らぬと主張したいか。
かつては人の子らが彼へと強いた罰のよに、
拒絶の印として
愛らしい額へ食い込む楔にならんと仕掛かっていたのだが
「え?」
「何か、聞こえて…。」
「誰か呼びました?」
風に乗って聞こえた
気配というか遠くからの呼び声というか。
そんな何かへ意識を誘われ、
あれれぇとキョロキョロしていたのだが……。
「あ、れ?」
「あら…。」
「え?」
確か確か、執行部が使っている教室にいたはずなのに。
頬をくすぐっての右から左へと吹いてゆく風といい、
辺りに響く様々な声やら物音、気配やらといい。
どう考えても此処って外じゃあないかしらと、
何となくぼんやりと感じたお嬢さんたち。
変だなぁ、これってあのその、
暖房の効いた電車で うたた寝していたような感じで
ほんのついさっきまで、
確かにどこかお部屋にいたはずなのにな。
スルリと思い出せなくて。
それどころか、そんな記憶の断片さえ
目覚めとともに徐々に曖昧になってくようで。
そんなお嬢さんたちの前には、
見覚えの重々あるお人が立っており。
「ああよかった。探していたんだ、それ。」
にっこり微笑って手を延べてくるのへ、
はあ さようでございましたかと。
一縷の戸惑いもないままに、
すんなりと差し出した緑の輪っか。
相手が触れたその拍子、
ぽん・ぽぽんっと弾けた振動が伝わって来て。
見下ろせば蔓に沿うて真っ赤なばらが幾つか咲いたのを、
彼が1つずつ丁寧に摘み取ると、
3人居たお嬢さん それぞれの髪へと挿してくださって。
「ごめんね、お騒がせしたね。」
重ねて頬笑むその笑顔に、何だかふわりと胸が温まり、
とっても良いお話を聞いたときみたいに、
とてもとても心地の良い音楽を聴いたときのよに、
嬉しい想いでいっぱいになって。
「………あ、えと。」
やはり同じような心持ちだったらしい、同じ制服を着た下級生が、
はっと我に返って見せると、
神々しい表情でいる彼へと小さく一礼してから、
「お姉様、上着もなくてはお風邪を召してしまわれます。」
上級生にあたるのだろう、突然現れた娘さんたちへ、
そんなお声を掛けていて。
《 イエス。これって……。》
《 ごめん、わたしにも何が何やらなんだけど。///////》
ご本人までもが 思い詰めから我を忘れてしまったところに起きた、
いわゆる奇跡のようなものだったよで。
それでもそこが
奇跡の力の、素晴らしさ…というか恐ろしさというか。
傍に居た一子さんにも効果が及んだか、
微妙に記憶が飛んでいて。
いつの間に上級生たちがこうまでの間近へ現れたのか、
何ともはっきりしなかったのだけれど。
それを正そうとするより先に、
眼前の状況に合わせた辻褄合わせ、
いわゆる記憶補正の作用が働いて。
ああ、私もお教室に戻らないと、
それに、こちらのお姉様たちも
カーディガンも羽織らぬままお外にいては寒かろうと。
姐御肌で世話好きな気性が顔を覗かせ、
さあさ戻りましょうと、取り計らってくれており。
“そっか。神の子の光の覇気が……。”
昔むかし、何の下地もない中で教えを説いていたおりも、
教義を聞かせる手段としては、
こうまで強硬なそれ、発揮しはしなかった彼なのだろうけど、
守りたい者へと延ばされた御手のなせる技としてならば、
湖水の上を歩けるほどに その身が浮遊しもすれば、
水がワインに変わりもし、
いくらでも無尽蔵にパンや魚が出て来たりもした訳で。
“そういった色々に比べれば、
ささやかな奇跡だったということなのかなぁ…。”
ミレニアム単位という付き合いの長さがある釈迦牟尼様でも
こういうことが起きるほどとは気づかなんだ、
実は結構切羽詰まってたらしいイエスの奇跡の力にて、
世間的にはこっそりした、されど途轍もない格好
掟破りの解決に至った、ひと騒ぎだったようでございます。
お題 * 『ボクとキミとをリボンで結ぼうvv』
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*何とも力技な展開ですいません。
10月末日って、
まだあんまり寒くはなかったよね。(おいおい)
つか、ここまですっとんぱったんな秋になろうとは。
ブッダ様が子供になっちゃう下りは、
別口の番外話にしたもんかどうしよかと、
実は結構迷ったのですが、
同じ流れでもいいんじゃなかろかと、
安易に考えてのこの始末でございます。
長々とした展開に、お付き合いくださりありがとうございました。
もちょっと続きますので、
よろしかったらvv(と言いつつ、少々お待ちを…。)
めーるふぉーむvv


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